【HP ENVY x360 診断事例】「遅い」の正体は”電源が切れない”故障だった|早川スタイル

HP ENVY x360 電源が切れない不具合の診断 糸魚川市 早川スタイル パソコンサポート・修理
「遅い」の正体は電源が完全に切れていない不具合でした。

結論から先にお伝えします。

「最近パソコンが遅い」というご相談から診断を始めたところ、実際には シャットダウンしても本体の電源が完全に切れていない という、もっと根本的な異常が隠れていました。SSD交換・Windows 11の入れ直し・BIOS再書き込み・完全放電まで行っても改善せず、最終的に システムボード(マザーボード)上の電源管理回路の不具合が強く疑われる という診断に至りました。

高額な基板修理を続けるより、状態の良い中古パソコンへの買い替えをご提案した事例です。「遅い」の裏に何が隠れていたのか、順を追ってご紹介します。


ご相談:「最近、パソコンが遅い」

糸魚川市早川地区の20代のお客様から最初にいただいたのは、とてもよくあるご相談でした。

最近、ノートパソコンが以前より遅く感じる

対象機種はこちらです。

HP ENVY x360 Convertible 13-ar0xxx(製品番号:6RH28PA#ABJ)

  • CPU:AMD Ryzen 7 3700U
  • メモリ:16GB
  • ストレージ:NVMe SSD 512GB
  • OS:Windows 11

Ryzen 7・メモリ16GB・NVMe SSDという構成ですから、事務作業やネット閲覧で極端に遅くなるようなスペックではありません。そこで「古いから遅い」と決めつけず、原因を一つずつ確認していくことにしました。


まず確認:SSDは正常だった

遅さの原因として、まずストレージの故障や容量不足を疑いました。

搭載されていたのは Samsung MZVLB512HBJQ(512GB NVMe SSD)。CrystalDiskInfoで確認すると、

HP ENVY x360 元SSD 健康状態99% 正常 糸魚川市 早川スタイル
  • 健康状態:99%(正常)
  • エラー:なし
  • 空き容量:約70%

つまり「SSDが壊れているから遅い」「容量が足りないから遅い」という典型的な原因ではありませんでした。

一方で、このSMART情報には後から重要な意味を持つ数字も記録されていました(後述します)。


CPU性能が異常に低い

次にCPU-Zで性能を測定しました。すると、

  • Single Thread:167.0
  • Multi Thread:880.6

Ryzen 7 3700Uとしては、明らかに低すぎる数値です。

タスクマネージャーではクロックが2GHz以上出ており、「熱で性能が落ちる(サーマルスロットリング)」という単純な話でもありませんでした。Chromeを閉じると多少は落ち着くものの、それだけでは説明できない状態でした。


サービスが無効化されていた

Windows内部を調べると、Google Chromeの更新画面に エラーコード 0x80070422(Windowsサービスが無効化されているときに出るエラー)が表示されていました。

サービス一覧を見ると、Google Updater・AMD関連・HP関連・Dropbox関連など、複数のサービスが「無効」になっていました。過去にこのパソコンへ「高速化」「最適化」を狙った設定が行われた形跡がうかがえます。

無効化されたサービスを正常に戻すとChromeの更新はできるようになりました。ただし、これだけでは大きな問題は解決しませんでした。

「高速化」を狙ってサービスを一律に無効化すると、かえって不具合の原因になることがあります。良かれと思った設定が裏目に出るケースは少なくありません。


最大の発見:シャットダウンできていなかった

調査を進めるうちに、決定的な異常が見つかりました。

Windowsから普通にシャットダウンしても、

  • 画面は消える
  • しかし電源ボタンのランプが消えない
  • ファンも回り続ける

shutdown /s /t 0 というコマンドを使っても同じ。再起動時にも「画面は真っ黒・電源ランプは点灯・ファンは回転・数分間起動しない」という現象が出ました。

つまり、画面上は終了したように見えても、本体は完全には電源OFFになっていなかったのです。


お客様の証言とぴたりと一致

ここでお客様から、以前からの使い方について重要なお話を伺いました。

  • シャットダウンしたはずなのに、勝手に再起動する」ことがあった
  • そのため、しばらく 電源ボタンの長押しで強制終了 して使っていた
  • バッテリーがすぐになくなる」症状もあった

今回わかった「画面が消えても本体の電源が切れていない」という現象を踏まえると、バッテリーが早く減っていた理由にも説明がつきます。使う側からは終了したつもりでも、内部では電源が入り続けていた可能性が高いのです。


イベントログとSMARTデータが語る「電源異常」

Windowsのシステムログを詳しく見ると、

  • ACPI Event ID 13:Embedded Controller(EC)が一定時間内に応答しなかった、というエラーが繰り返し記録
  • RTC(時計)・ACPIに関連するエラーも確認

EC(Embedded Controller) はノートパソコン内部で、電源制御・バッテリー管理・ファン制御・スリープ/復帰・シャットダウンなどを司る重要な部分です。

さらに、先ほどのSSDのSMART情報にも異常を裏づける数字が残っていました。

  • 電源投入回数:11万回超(使用時間2,700時間に対して不自然に多い)
  • 予期しないシャットダウン(アンセーフシャットダウン):7,000回超

「勝手に再起動する」「強制終了で使っていた」というお客様のお話と、数字がきれいに一致しました。この段階で、単純なWindowsの設定ではなく、BIOS・EC・電源管理回路まで視野に入れる必要があると判断しました。


SSDを交換し、Windows 11をクリーンインストール

Windows環境そのものが壊れている可能性を切り分けるため、元のSSDを取り外し、別のNVMe SSDを取り付けて Windows 11を完全に新規インストール しました。

無効化されたサービス・古いドライバー・不要なソフト・壊れた設定など、旧環境の影響を一切受けない状態にする、重要な切り分けです。


CPU性能は回復した(が、それだけでは終わらなかった)

新しい環境でCPU-Zを再測定すると、性能は大きく回復しました。

HP ENVY x360 CPU-Z Ryzen7 3700U 性能回復 早川スタイル

🔧 CPU性能の変化(Single Thread)

旧環境      167.0 ██████████████████████████
入れ直し後  357.7 ████████████████████████████████████████████████████████ (約2.1倍)

🔧 CPU性能の変化(Multi Thread)

旧環境      880.6 ███████████████████████████
入れ直し後 1841.0 ████████████████████████████████████████████████████████ (約2.1倍)

実質2倍以上に戻ったことから、CPUそのものが壊れて性能が出なくなっていたわけではないとわかりました。旧環境(無効化されたサービスや壊れた設定)にも、遅さの一因があったと考えられます。


しかし、電源異常は再発した

クリーンインストール直後は一時的に正常にシャットダウンできたため、「旧Windows環境が原因だった可能性が高い」とも考えました。

ところがその後、同じ症状(画面消灯後も電源ランプ点灯・ファン回転継続)が再発しました。SSDを交換してWindowsを完全に入れ直しても電源異常が残った以上、「旧SSDや旧Windowsだけが原因」という可能性は大きく下がりました。


CMOSエラー・BIOS再書き込み・完全放電、それでも改善せず

さらに切り分けを進めました。

  • CMOS Reset(502) が発生(「The CMOS checksum is invalid.」表示)。複数回発生
  • HPの手順に沿って CMOSリセット を実施 → 改善せず(BIOS上の日時は正常だったため、単なる電池切れとも異なる)
  • BIOS破損の可能性を除外するため、HP公式BIOS(F.30)で BIOSそのものをUSBから再書き込み(「Writing new BIOS Image」表示)→ 改善せず
  • ACアダプターとバッテリーを外し、電源ボタン長押しで ECを含めた完全放電 → 改善せず

ここまでやっても、電源が完全に切れない症状は変わりませんでした。


セーフモードでもクラッシュ(ブルースクリーン)

常駐ソフトやドライバーの影響を確認するため、必要最低限の構成で動く セーフモード で起動し、シャットダウンを実行しました。

すると今度は ブルースクリーン になりました。

ブルースクリーン。停止コード IRQL_NOT_LESS_OR_EQUAL、失敗した内容 ntoskrnl.exe
  • 停止コード:IRQL_NOT_LESS_OR_EQUAL(0xA)
  • 失敗した内容:ntoskrnl.exe(Windowsの中核部分)

最低限の構成でも異常が出た、という結果です。


メモリは正常・クラッシュダンプも解析

ブルースクリーンではメモリ異常も疑われるため、Windows上ではなく HP PC Hardware Diagnostics UEFI からメモリを検査しました。

結果は Memory Quick Check:PASSED。少なくとも簡易診断では、メモリ故障は検出されませんでした。

さらに、クラッシュ時のダンプをMicrosoftのWinDbgで解析したところ、複数回のクラッシュで共通して、Windowsカーネル内部(nt!ExpLookupHandleTableEntry)で同じ種類の不正アクセスが繰り返し発生していました。特定のメーカー製ドライバーが直接の原因として名指しされたわけではありません。


診断結果:電源管理系のハードウェア不具合が強く疑われる

今回、次のところまで切り分けを行いました。

元SSDの健康状態確認 → SSD交換 → Windows 11完全クリーンインストール → CPU性能確認 → サービス・ドライバーの切り分け → イベントログ解析 → CMOSリセット → BIOS(F.30)再書き込み → 内蔵バッテリー切断による完全放電 → セーフモード検証 → HP UEFIメモリ診断 → クラッシュダンプ解析。

それでも「シャットダウン時に本体電源が完全に切れない」症状は残りました。

  • CMOS Reset 502
  • EC応答エラー(ACPI Event ID 13)
  • RTC/ACPI系エラー
  • セーフモードでもクラッシュ
  • BIOS再書き込みでも改善しない

これらを総合すると、システムボード上のEC・ACPI・電源管理回路(またはSoC周辺)のハードウェア的な不具合が強く疑われる、という判断になります。

※基板上のどのIC・回路が故障しているかまで特定したわけではありません。正確には「マザーボード上の電源管理・EC関連の不具合である可能性が非常に高い」という診断です。断定を避け、確認できた事実にもとづいてご報告しています。


修理より「良質な中古パソコンへの買い替え」をご提案

ここまで原因を絞り込めても、マザーボードを交換すれば必ずお得になるとは限りません。

  • この機種はRyzen 7 3700U世代。まだ使える性能ではあるものの、基板交換・修理まで行うと中古パソコン一台を購入できる程度の費用になる可能性があります
  • しかも基板を直しても、バッテリー・液晶・キーボード・ヒンジなどの経年部品はそのままです

そこで今回は、高額な基板修理を続けるより、状態の良い中古パソコンへ買い替えることをご提案しました。元のSSDはデータの読み出しができる状態なので、必要なデータは新しいパソコンへそのまま移行できます。


この事例からお伝えしたいこと

「パソコンが遅い」の原因は、決して単純ではありません。

今回は結果的に、電源管理そのものに異常があり、正常にシャットダウンできていないことが大きな問題でした。こうなると、

  • シャットダウンしたのにバッテリーが減る
  • 電源を切ったあともファンの音がする/ランプが消えない
  • シャットダウンしたのに再起動する
  • ときどきCMOSエラーが出る
  • 動作が以前より不安定・遅い

といった複数の症状が同時に出ても不思議ではありません。これらが組み合わさっている場合、Windowsの再インストールだけでは解決しないハードウェア側の問題も考える必要があります。

「SSDなのか」「Windowsなのか」「ドライバーなのか」「メモリなのか」「BIOSなのか」「マザーボードなのか」を一つずつ切り分けていくことで、不要な部品交換や修理費を避けることができます。早川スタイルは、原因を一つ見つけた時点で「これが原因だ」と決めつけず、丁寧に切り分けることを大切にしています。


パソコンの不調、早川スタイルにご相談ください

「なんだか最近遅い」「電源まわりの動きがおかしい」——そんなときは、まずはお気軽にご相談ください。診断・お見積もりは無料です。修理が得策なのか、買い替えが得策なのかも含めて、正直にご提案します。

買い替えをお選びいただく場合も、**メモリ16GB・新品SSD搭載の中古パソコンを34,000円〜**ご用意しており、データ移行までまとめてお任せいただけます。

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