糸魚川市能生地区のお客様から「Windows Updateのあと、パソコンが起動しなくなった」とご相談をいただきました。原因は更新中の強制電源断によるシステムファイルの破損でしたが、この機種が「Intel Optane Memory H10」という特殊なストレージを積んでいたため、通常なら短時間で終わる復旧が半日がかりの作業になりました。最終的に、大切なデータをすべて守り切った上で、通常のSSDへ交換してWindows 11を再構築。今後は普通に更新も修理もできる状態でお返ししました。総額24,000円(SSD部品代込み)です。
お客様の困りごと:「更新したら起動しなくなった」
糸魚川市能生地区のお客様から、次のようなご相談をいただきました。
「更新プログラムが始まって再起動になった。一晩待っても終わらないので、仕方なく電源を切った。そうしたらWindowsが起動しなくなって、自分でもいろいろ試したけど直らない」
対象は富士通の一体型パソコン ESPRIMO FH90/E2(型名 FMVF90E2B)。2020年発売の、比較的新しく性能も十分な機種です。
Windows Updateの最中に電源が切れてしまうと、システムの重要なファイルが書き込み途中で壊れ、起動できなくなることがあります。今回はまさにそのパターンに加えて、この機種ならではの”落とし穴”が重なっていました。
症状の経過

最初にお預かりしたときは、電源を入れてもWindowsが立ち上がらず、画面に「INACCESSIBLE_BOOT_DEVICE(起動デバイスにアクセスできません)」や「起動可能なデバイスが見つかりません」といったメッセージが出る状態でした。経過を整理すると、次のとおりです。
- 更新中に一晩たっても終わらず、やむを得ず強制的に電源オフ
- 再起動すると、黒い画面の左上にエラー表示
- ネットの情報を頼りにご自身で対処 → かえって症状が悪化
- 最終的に「起動可能なデバイスが見つかりません」に
ただ、コマンド操作でストレージ(SSD)の中身を確認すると、ドライブそのものは認識できました。つまり、パソコンが壊れてデータが消えたわけではない——ここが今回いちばん重要なポイントです。
まず最優先したのは「データの保全」

起動しないパソコンを前にすると、つい「chkdsk」「ブート修復」「初期化」といった操作を次々に試したくなります。しかし、それらは状況を悪化させることもあります。
そこで早川スタイルでは、修復作業に手をつける前に、まず現状のSSDを丸ごとイメージバックアップすることにしました。使用したのはMacrium Reflectというバックアップソフトです。
ところが、最初のバックアップは失敗しました。原因は、約3GBの小さな回復用パーティションで MFT(ファイル管理の索引)の破損が見つかったことでした。この壊れた3GBだけをバックアップ対象から外したところ、Windows本体(約256GB)のイメージ取得に成功。
これで「この先どんな操作をして悪化しても、預かった時点に戻せる」という安全網を確保できました。壊れているように見えても、まず救えるものを救う。これが復旧作業の鉄則です。
原因の切り分け:ブート領域だけの問題ではなかった

診断を進めると、問題は一つではありませんでした。
- Windows Updateの中断による処理の不整合
- EFI/BCD(起動情報)の不整合
- そして決定打となった、Windows本体の起動ファイル
winload.efiの破損
BIOS設定を調整しながら起動を試すと、一度は起動の途中まで進むものの、最後に「\Windows\System32\winload.efi / 0xc0000221 / チェックサムが一致しません」というエラーで停止しました。
0xc0000221 は、起動に必要なファイルが壊れていることを示すエラーコードです。起動情報(EFI/BCD)を直しても、Windows本体側のファイルまで壊れていたため、通常のブート修復では復旧しきれない状態だったのです。
この機種の特殊事情:Intel Optane Memory H10とは
復旧をここまで難しくした最大の要因が、この機種のストレージ構成でした。

搭載されていたのは、一般的なSSDではなく Intel Optane Memory H10(型番 HBRPEKNX0101AL)。1枚のM.2基板の上に、
- 高速な Optaneメモリー 約16GB
- 通常の SSD領域 約256GB
の2つが同居した、特殊な製品です。
このH10は、単体では正しく動きません。Intel RST/VMDという仕組みと、BIOSの特別な設定(PCIeの分岐)がそろって初めて機能します。ストレージのモードを普通の「AHCI」に切り替えると、ドライブそのものが見えなくなるほどデリケートな構成です。
さらに背景として知っておきたいのが、Optaneはすでに終息した技術だということです。
- Optaneの中核技術「3D XPoint」は、IntelとMicronが共同開発したもの
- しかし両社とも撤退(Micronは2021年、Intelは2022年にOptane事業を終了)
- 性能は優れていたものの高価で普及せず、作り手自身が手を引いた
つまりH10は、性能は良いのに、いざ故障したときに直しにくい”孤児”のような技術。NEC・Dell・HPなど各メーカーでも「Optane搭載機で起動デバイスが見つからず止まる」トラブルが知られており、修理の現場では”難物”として有名です。
試した修復作業(すべて記録しています)
データを守る準備を整えた上で、まずは既存のWindowsを生かす方向で、以下を順番に試しました。結果はいずれも起動には至りませんでした。
- BCD(起動情報)の再構築 … ファイルは正しく作られるが起動せず
- bootrec各種コマンド … 効果なし
- スタートアップ修復(複数回)… 効かず
- ストレージモードの切り分け(AHCI ↔ RST)… RSTが正しいと判明するも起動せず
- EFIパーティションの再フォーマット+再構築 … ファイルは置けるが起動できず
- Secure Boot(セキュアブート)無効化 … 今回は無関係
- Windowsの「初期化」… 開始前に不可能と判定され、実行できず
- 富士通のリカバリ機能 … 呼び出せず
起動情報もパーティション構造も正常なのに起動しない。ここで「ソフト的なブート修復では救えない。H10という土壌そのものが復旧を阻んでいる」と判断しました。
方針転換:Optaneを外し、通常のSSDへ換装
技術的には、まだ試せることは残っていました。しかし、お客様のパソコンです。確実性・作業時間・今後の使いやすさまで考える必要があります。
すでに終息した特殊技術を無理に復元しても、次に更新や不具合が起きたときにまた同じ苦労を繰り返すだけ——。そこで、Optane H10を外し、一般的なNVMe SSDへ交換する方針をお客様にご提案し、ご了解いただきました。

作業内容は次のとおりです。
- 預かり時のイメージバックアップを別のSSDへ復元し、データを二重に確保
- 通常のM.2 NVMe SSDへ換装
- BIOSをAHCIに切り替え、Windows 11をクリーンインストール(Optane特有の設定が不要になり、素直に完了)
- サウンド(Realtek/Dirac)やチップセットなど、富士通サポートから機種専用ドライバを整備
- バックアップからお客様のデータを移行
- 動作確認をして返却
ちなみに、Windows 11 Proのライセンスは、SSDを交換してもオンライン認証で問題なく通りました。
データの移行で活躍した「robocopy」
データ移行では、一つ工夫がありました。
写真や動画、iPhoneのバックアップ(約17GB・9万ファイル)などをWindows標準のコピー機能で移そうとすると、一つのファイルで引っかかった瞬間に、全体が止まってしまうのです。
そこで、Windowsに標準搭載の robocopy というコマンドに切り替えました。robocopyは、
- 1ファイル失敗しても止まらず、次へ進む
- 差分だけコピーできる
- ログを記録できる
といった特長があり、大量ファイルの移行に非常に強いツールです。最後はログで失敗ゼロを確認し、確実にデータを移し終えました。
なお、取り外したOptane H10も、元データが入ったままお客様へお返ししました。特殊な部品のため一般のパソコンでは読み出しにくいものですが、”元データが残る現物”として、保管用の保険になります。
今回の費用
当初は「元のSSDにWindows 11をクリーンインストールする」想定で、18,000円とご案内していました。
しかし調査の結果、ストレージが特殊なOptane H10だったことが判明し、分解・通常SSDへの換装(部品代 5,500円)・大量データの移行など、当初想定していなかった作業が発生しました。
そのため、最終的な請求は24,000円(技術料+SSD代込み)とさせていただきました。想定外の対応が加わりましたが、当初のお見積りから大きくかけ離れないよう調整しています。
- 当初見積:18,000円
- 最終請求:24,000円(うちSSD部品代 5,500円)
※早川スタイルは免税事業者のため、消費税はいただいておりません。
なお、クリーンインストールに伴い、富士通独自のテレビ機能(DigitalTVboxなど)は復元できません。こうした失われるものは、作業前にきちんとご説明しています。
同じ症状でお困りの方へ
もし次のような症状が出たら、今回のケースが参考になるかもしれません。
- 「起動可能なデバイスが見つかりません」「自動修復ループ」が出る
- Windows Updateの後から起動しなくなった
- 2019〜2021年頃のNEC・富士通・Dell・HPのパソコン(Optane搭載機の可能性)
覚えておいていただきたいポイントは3つです。
① 「起動しない」と「データが消えた」は別物です。 起動しなくても、中のデータは無事なことがよくあります。あきらめる前にご相談ください。
② ネットの情報で修復コマンドを次々試す前に、まずバックアップを。 良かれと思った操作が、かえって状況を悪化させることがあります。
③ 特殊なストレージ構成は、無理に直さずSSD換装が確実なことも。 特にOptane搭載機は、通常のSSDへ交換してシンプルな構成にした方が、その後数年の使いやすさまで含めて安心です。
買い替えれば数万円〜十数万円かかるところ、本体の素性が良ければ、データを守ってSSD換装で安く延命できるケースは少なくありません。
まとめ
今回の修理でいちばんお伝えしたいのは、「難しい故障を直せました」ということよりも、大切なデータを守りながら、どこまで復旧を試し、どこで方針を切り替えたかという判断の部分です。
起動しなくなったパソコンでも、いきなり初期化や買い替えを選ぶ前にできることがあります。糸魚川市・上越・妙高エリアで「パソコンが起動しない」「Windows Updateの後から調子が悪い」とお困りの方は、早川スタイルにお気軽にご相談ください。
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